はじめに

演奏やリハーサルまでに時間が十分無かったり、一度に多くの曲を演奏しなければならない場面に遭遇することがあるかと思います。初心者の方もドラムを始めたもののなかなか希望の曲にたどり着くことができないと志半ばでのギブアップにつながる恐れがあります。こちらの記事では演奏したい(演奏する必要のある曲を)なるだけ短期間で演奏可能にするために私が行っていることをご紹介したいと思います。

目次

一拍の長さ(ビート)と拍子を確認してテンポを測る

ドラム譜等楽譜がお手元にあれば、拍子やテンポについてはそれを参照するのが一番の時間短縮になるでしょう。もし譜面がない場合、あるいは譜面を参照したが楽曲と一致しない場合は以下のように作業します。

拍の捉え方がよく分からないという方はディスコ、ハウス、テクノ、ユーロビート、トランスなどといったダンスミュージックを検索して聴いてみてください。これらのジャンルでは多くの曲において4つ打ちとも呼ばれるバスドラムが拍を前面に押し出しています。

※音量にご注意ください

このようなリズムを感じることができるポイントを拍といい、これがいくつでグループ化されているかを表すのが拍子です。中には拍の位置や長さを捉えるのが難しいものや、変拍子と呼ばれるものもありますが、売れ筋の歌謡曲では4分の4拍子、3拍子または2拍子で、直感的に拍を把握しやすいものがほとんどだと思います。

デジタル機器のメトロノームにはタップ機能というものを備えた製品があり、曲を聴きながら拍のタイミングに合わせボタンをタップすることでテンポを測ることができます。またスマートフォンのメトロノームアプリも同様の機能を持ったものがありますので、拍子をまず先に設定し、画面をタップすることでテンポを測定することができます。

場面の切り替わりを認識する

曲を注意深く聴いていると場面の切り替わりに気づく箇所があると思います。こちらの曲Queen – Hammer To Fall (Official Video)の冒頭ではイントロ→歌が入ってA→B、というように場面が切り替わっています。このような変化のポイントを把握しておきます。

現在地から切り替わりまでの小節数を数える

一拍の長さと拍子がわかっていればそれぞれの場面の小節数を数えることができます。

まずは曲の出だしから次の場面までが何小節、そこからまた次の場面まで何小節と数えていきます。作業に慣れていなかったり、知らない曲だったりすると何度も聴き返して確認しなければ理解できないこともあり非常に根気が要りますが、曲の全体像をつかむためには欠かせない作業です。

場面(セクション)ごとにリズムパターンを決める

ここからはある程度ドラムの音やリズムパターンの蓄積が必要となります。ご自身で解決できない場合は周りの詳しい人や講師の先生に相談すると良いでしょう。

まずは決まった繰り返しのパターンを探します。4分の4拍子のロック、ポップスでは以下のようなパターンが多いのではないでしょうか。

次にアクセント等の特徴的なポイントを押さえます。上記の曲ではイントロ、Aメロにかけてギターが決まったリズムで演奏しており、ドラムもバスドラムを同じタイミングに合わせ一体感を出しています。また、Bメロに入ると4小節目、8小節目の2拍裏にアクセントがあり、ドラムはシンバルを使ってバンドと共にこの部分を強調しています。

このように他の楽器のリズムに合わせて演奏する部分や、バンド全体で一緒に盛り上がる場所で用いるアプローチを決めた後、その前後のつじつまを合わせるようにしてパターンを組み立てると曲の雰囲気が大きく損なわれることは避けられると思います。

場面切り替えのきっかけをつくる

曲中には、サビの部分で大きく盛り上がる以外にその前後で温度感の高低があります。ドラムをはじめ、その他の楽器もそういった場面同士を自然につないでいくために切り替えのきっかけ作りをしています。フィルインが入る場合もあれば、クレッシェンド、デクレッシェンドだけの場合もあろうかと思います。

この部分は音が詰まっているなど複雑で、聞き取りが非常に難しい場合が少なくありません。完璧なコピーが必要でない限り、目立つ特徴を押さえてご自身の演奏能力を大きく超えない範囲で行うことから始めましょう。大事なのは場面の切り替えを自然にし、よりドラマチックにすることですので、ここが腕の見せ所とばかりに欲張りすぎてリズムや雰囲気が壊れてしまわないように気をつけなければなりません。

上の項のリズムパターンとも共通しますが、細かい音の単位(サブディヴィジョン)を原曲のアプローチに近づけたり、共演者(バンド)のリズムに合わせて適切なものを選ぶことでより自然なニュアンスを出すことができます。これについてはまた別の機会に記事にするつもりです。お急ぎの方はサブディヴィジョンで検索していただくと情報が得られると思います。

終わりに

よほど厳密な演奏を求められる場合を除き、ドラムの演奏においては基本的な台本はあっても意味を損なわなければある程度の言い換えやアドリブ、セリフの使い回しが許される場合がほとんどだと思います。まずは曲のリズムやアクセントをしっかり把握し、曲がスムーズに、ドラマチックに流れていくようドラムのパターンを構築して、各パターンのつなぎ目がスムーズにいくよう練習しましょう。

最初はシンプルすぎるくらいで良いと思うんです。十分理解しコントロールできる技術で自信をもって演奏する方が、扱い切れないテクニックに振り回されてバタバタしているより説得力があり安心して聴くことができます。

いつかはやりたい!と思っている大好きな曲へのハードルが下がり、たくさん演奏できるきっかけになれば幸いです。

曲の構成確認、コピーや簡略化についてはオンラインでアドバイスできる場合もあるかと思いますので今後機会があったら試してみたいと思います。