バスドラムのシングル(1つ打ち)がある程度自由になってきたらダブル(2つ打ち)に挑戦してみましょう。非常にポピュラーなテクニックで、楽曲中で使われる場面も非常に多いことからクリアできれば表現の幅がグッと広がります。反面、うまくできないと悩みの種になってしまう場合も…。

この記事では私が普段行っているバスドラムダブルの方法をご紹介したいと思います。初心者の方にはより早い理解のため、また、苦手意識をお持ちの方にとってはお悩み解消のための一助となればとてもうれしく思います。

バスドラムなどのフットワークもスティッキングと同じように考える

バスドラムの足とスティッキングの腕、それぞれの使い方には共通したものがあります。

バスドラムの演奏はフットペダルを使って行うことから、手にスティックを持った状態と分けて考えがちなのですが、身体の使い方としては似通った点が多く存在します。フットワークのテクニックついてはJojo MayerのSECRET WEAPONS FOR THE MODERN DRUMMER – PARTⅡで詳しく解説されており、私自身もこの作品を見てフットワークに対する考えが変わりました。よければ手に入れてご覧になることをお勧めします。

足を引き上げながらペダルをキックするアップストローク

足を引き上げる際に足首のスナップを効かせてフットボードをキックします

ハイハットの奏法でダウンアップ奏法、アップダウン奏法が用いられることが多いと思いますが、フットペダル上でもこの動きを足で行っていきます。

手のアップストロークは腕全体を振り上げる動作を行うとき、手首を少し下に傾けることで1打打つことができます。これと同じく、足全体を引き上げる際に足先を少し下に傾けることで、足を引き上げる時に1打打つことができます。

足全体を浮かせ、それから一瞬遅れて足先のスナップがきます。ペダル操作を行わない時もペダルにはある程度足の重さをかけた状態にしておき、足を浮かした時にビーターが元の状態に戻ろうと手前に返ってくるようにします。この返ってくるビーターを足先のスナップを使ったペダル操作によって押し返し打面にヒットさせるところがコツです。

引き上げた足の力を抜き、降ろす動作のダウンストローク

引き上げた足の力を抜いて、足の重さでペダルを踏みこみます

先ほど上に引き上げた足を脱力し、足の重みを利用して降ろします。この降ろす動作をペダルに伝え1打打ちます。これをダウンストロークとします。

上の映像ではビーターの振り幅が狭くなっていますが、これでは十分な音量が出せません。実際は下の映像のように1打目の反発によってもう少しビーターが手前に返って来たところをダウンストロークのペダル操作で押し返します。これによって2打目も十分な音量が確保されます。ダブルにすると音が小さくなってしまうとお悩みの方は、なるだけビーターの振り幅が稼げるように工夫されると改善する可能性があります。

このように足を上げるときに1打(アップ)、足を降ろすときに1打(ダウン)、このアップダウンの動きで2つ打ちを行っていきます。

ドラムセットとのコンビネーション練習を通して「使える技術」に

ハイハットやスネアとのコンビネーションの中でアップダウンの感覚を身に着けていくことが大事です

バスドラムだけに集中すれば上記のアップダウンの動き自体はそれほど難しいものではないと思います。ある程度理解できたら他の楽器と一緒に、そしてドラムセット全体とのコンビネーション(組み合わせ)を通してこの動きを身体に覚えこませていきましょう。

連続しないシングル(1つ打ち)はダウン、2打連続するダブルは基本1打目をアップ、2打目をダウンで処理していけばよいのですが、いざ右手左手の動作とバスドラムのダブルを同時進行させるとなると頭が混乱してしまう場合が少なくありません。これを解消するためにはある程度手足の組み合わせを網羅しておくことが有効であると考えます。以下はエクササイズの一例です、よろしければお試しください。

手足の組み合わせエクササイズ例

実践的なパターンを練習する前にこういった網羅的なエクササイズを終えてから移った方が理解が早い場合があります。とはいえ機械的で退屈に感じられるかもしれませんので、必要性を感じた時に準備運動程度にやる程度でも良いかと思います。

また、この手の練習だけに終始してしまうのも良くありません。曲にマッチしたパターンというのがやはり生きたフレーズであると思いますので、体の使い方を覚えたら曲や伴奏に合わせて実践的なフレーズ(聞き取りしてコピーしたり教本、スコア等に書かれているもの)を練習していかれると良いでしょう。また、ご自身でフレーズを自作してみることも効果が高いですので強くお勧めします。

スピードで行き詰まったら、短いフレーズで瞬発力を上げる

ある程度ダブルが踏めるようになってくると、やがてスピードが追い付かないという問題に突き当たるかもしれません。

そんな時は同じ動作の続くリズムパターンではなく、フィルインなどの短いフレーズの中にバスドラムのダブルを取り入れて瞬発的なスピードを上げる練習をしてみると効果があるかもしれません。この時、リズムパターンで用いられているダブルの音価よりも細かい音価を使うようにする (8分音符の場合は3連符や16分音符を使う) と必然的に素早い動作が必要になりますので良い練習になります。

ある程度素早い動きが可能になったら効率の良い体の動かし方が身についてきていると思いますので元のリズムパターンに戻って改めてダブルを踏んでみましょう。もし効果を感じられなければ上記の瞬発力練習でのご自身の体の動きをよく観察して、それをお手本にリズムパターン中の動きに修正を加えていきます。速く動かせているときとそうでない時、何か違いは見当たりませんか。視覚的、感覚的な違いを認識できれば、その差を埋めていくことで改善できる可能性があります。また、好きなドラマー、上手な人の動きを真似るのも同様に効果があると思います。

おわりに

ドラムのフットペダルの操作というものは特殊で普段の生活では行わない動作ではありますが、フットペダルが足元にあってバスドラムを演奏しているつもりで体を動かせば意外と感覚の養成に役立つ場合があります。 是非ちょっとした隙間時間にでも今回のアップダウンの動きを思い出して足踏み運動やエアドラム練習をしてみてください。また、お行儀が悪いですが履いたスリッパのつま先部分を足の指で押し込んで後方部分をかかとに当てて鳴らすという動作はアップストローク時のペダル操作に近い感じがします。

もちろん、このような代替練習よりも可能な限り練習スタジオに通ったり、ご自宅の練習環境を整えるなどして実機で練習を積むのが一番の習得の近道であろうと思います。その際は更に、詳しい人に見てもらったり、動画に撮って見直したりするとより効果が高まるでしょう。 是非バスドラムのダブルを身につけて演奏を楽しんでください。

以上何か参考になる点がありましたら幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。